長野から都心へ、ファインアートラインの出番です。
マンションの共用空間に誕生したアートと作者たち
実現した居住空間の研究開発との連携。
長野都市計画という会社ご存知ですか?長野を本拠地にしながら、東京エリアへの事業展開を意欲的に行なっている会社ですが、今回都心に賃貸マンションの開発にあたり、ファインアートを学ぶ学生の取り組みと連携、アートのある空間デザインが誕生しました。 マンションは「ゲートマークス」というブランドで展開されいますが、限られた土地に多様な住空間を新しく生み出すクリエイティビティは、美専とはベストマッチ。こうした連携から、今回のアブストラクト(抽象表現)が導かれました。
[作者たちのステートメント]
雨の日のワイパーは、雨粒を拭い去ることで、その向こうにある景色を見せてくれます。
平泳ぎが水をかき分けること、雪解けが冬を溶かしていくこと、ケーキのクリームをヘラできれいにすこと。私たちは、何かを「足す」ことよりも、そこにあるものを「動かすこと」や「取り除くこと」によって、新しい景色や形が生まれる瞬間に惹かれます。
この作品もまた、絵の具をただ重ねるだけでなく、削り取ることで生まれた抽象画です。
一般に「抽象画(abstract painting)」というと、具象的なイメージから離れていく絵画だと思われがちです。けれど、この作品において、それは単に何かを曖昧にしたり、形を失わせたりすることではありません。私たちにとっての「抽象」とは、そこにある「イメージや記号」を取り去るーつまり「抽(す)く」こと。そうすることで、その奥に隠れていた絵の具そのものの表情や支持体、み、剥がれ、そして重ねられた時間を、もう一度見えるようにすることなのです。
今回、私たちは、「スクレイパー」と呼ばれる、削ったりこすり落としたりするための道具を自ら制作し、筆の代わりとしました。ワイパーが窓の水滴を拭い、外の景色を映し出すように、スクレイパーを動かすとき、絵の具をのせることと削り取ることが同時に起こります。新しい色や層を画面に与えながら、その下にあったものを掘り起こしていく。重ねることが、そのまま取り除くことにもなっているのです。
人は絵を見るとき、どうしてもそこに何かの形や意味を見つけようとしてしまいます。顔のように見えるもの、風景のように見えるもの、記号のように読めるもの・・・・・。けれど私たちは、そのように立ち上がってくるイメージをいったん剥がし取り、画面をもう一度、絵の具という「物質」そのものとの出会いへと引き戻したいと願っています。
―――― 安原愛実、上條美月、高橋亜加奈